もうアメリカで野球することはない?

 このコラムでドジャース・キャンプについて報告することをしばらくやめようと思う。わたしがあこがれたアメリカの野球(ベースボール)とそこに集う人々、そして彼らとの交流の中身を改めて見つめなおすまで、このコラムは本来の「還暦・古希野球」を柱として日本のスポーツ文化を考える内容に集中しようと思ったのだ。

 今回の米大統領選挙前のこと、知人がいった。「旅費さえ出せば滞在費はいらないからと何度も誘ってくれた友人がミシガンから日本へ帰るといってるわ」。ロサンゼルスに住む日本人は「トランプが再選されたらアメリカを出てカナダへ移ろうと思う」とつぶやいた。  ネットの情報では米国人と結婚して永住権も取った日本人の母親が子どもを連れて日本へ帰ってきたという。小学校での銃訓練(避難訓練?)に違和感を覚え、さらに小学生が学校へ銃を持ってきたと聞き帰国を決意したのだった。

 13日、アメリカ大統領選挙の結果が判明した。全50州の集計が終わり、バイデン候補が過半数の270を大幅に超える306人の選挙人を獲得したという。現職のトランプ大統領は232人。今回の大統領選挙は自分自身の問題として注目してきた。ロサンゼルス国際空港(LAX)に到着して入国審査を受け、「さあ、アメリカの空気を吸うぞ」と顔を上げるとそこに大統領の大きな顔写真がパッと目に入る。「アメリカへようこそ」の歓迎の言葉とともに。それがあるとき、オバマ氏からトランプ氏に変わっていた。

 わたしは人種差別を認めるようなトランプ氏が敗北したことを歓迎する。アメリカ国民は良識を示したと思う。よかった。半面、トランプ氏は7,000万人を超える支持を集めている。この4年間でアメリカ国民の分断が深刻化しているとのこと。そこでわたしは想像をめぐらした。

 ベロビーチでベースボールを愉しんだ人たちも半分に分かれて憎しみ合っているのだろうか?ベロビーチのあるフロリダではトランプ氏が勝利した。フロリダにはアジア人や中南米からの移民を排除したいと考える人たちがいっぱい住んでいるのだろうか?NBA(全米プロバスケットボール協会)は積極的に「Black lives matter」を唱えて試合のボイコットも行った。「拘束され、撃たれ、殺されているのは我々だ」と訴えて。MLB(大リーグ)はどうだったのだろうか?

 ドジャータウンで朝食やディナーで同席した人々は憎しみ合ってはいないだろうか?今回アメリカを真っ二つに割ったような選挙結果を知って、アメリカへの夢やあこがれがしぼんでいったのが残念だ。もちろん、サンディエゴで、ロサンゼルスで、ベロビーチで、そしてアリゾナでベースボールをとおしてわたしを受け入れてくれた仲間からは人種差別に組するような人物はいなかった。そこには異国の野球愛好者を歓迎するムードがあった。だが、それも昔のことになったのかも知れない。今回の大統領選挙を見てため息をつく自分がいる。

 昨夜はTVで映画「グローリー~明日への行進」(2014年製作)を鑑賞した。マーティン・ルーサー・キング牧師を中心とする黒人たちが投票権を求めて、アラバマ州セルマからモンゴメリーへ向かって行進する物語である。必死な戦いの時代は1965年、わたしが高校1年生としてスポーツに明け暮れていたころの話である。遠すぎる歴史ではない。

 アメリカ民主主義への幻滅。もうアメリカで、昔のような純粋無垢な気持ちで野球をすることは出来ない、となればもうアメリカでプレーすることはないだろう。そう思うと残念だが、あとは日本で古希野球・還暦野球を愉しもうと考えている。最近ピッチングがよくなっている。打たれることが少ない。年齢を重ねて技術が向上しているようだ。そんなたわいもない話題を提供しながら、中高年の生き甲斐を共有するのも悪くない。

 そのうちに世界は変わるだろう。

シニアの昭和史 独り言 (還暦野球スポコラ改題)

輝くシニア発掘~中高年に励ましを~

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