東京五輪に想う
考えさせられた東京五輪もあと二日となった。自分のために「歓迎せざる」今大会についてまとめてみようと思った。
1.スポーツウォッシングについて
アメリカの大学教授の言葉だそうで、政治や世の中のまずいことをスポーツイベントでもって洗い流す、つまり国民の目を現実からそらせるときにスポーツを利用することだそうだ。今回はぴったりはまった。新型コロナの対策が後手後手に回って菅内閣の支持率が下がっていく。「オリンピックが始まって日本選手がメダルを取れば一気に風向きが変わる」、支持率も上がって秋の総選挙に有利、と考えたのだろうか。この政治利用が嫌だったなあ。
2.IOC(国際オリンピック委員会)の正体見たり
IOCが金儲けの団体になっていることがはっきりして、バッハ会長などは最初のあいさつで日本と北京を間違えたし、もう次の大会を実施することに気が向いている感じだった。日本の感染状況や猛暑などは巨額の放映権料の前にはゴミ程度の問題?かと考えざるを得ないIOC。一度解体して、本当に世界中で親善、友好、相互理解のある新しいスポーツイベントをつくるべきだと思った。現在の五輪そのものに失望した。
3.スポーツを大切にしない日本の取り組み(この項Newsweek日本版、加谷氏の論を参考)
まず新国立競技場建設費用の増大。公式エンブレムの盗作問題。JOC武田会長(当時)が誘致に関してフランスで贈収賄疑惑をかけられた事件(辞任)。組織委員会森会長の女性蔑視発言による辞任と、後任に川渕三郎氏を密室で決めていた問題。佐々木宏氏が女性タレントにブタを重ねたこと。楽曲担当の小山田圭吾氏がホロコーストを揶揄していた問題。もちろん辞任。こんなにいろいろあった東京五輪。要するに国や関係者は本当にスポーツがわかっていない。そういうことなのだ。
4.76年前と同じことを繰り返す?!日本
負けるとわかっていて戦争に突入していった戦前と似ていると誰かが言っていた。科学的な検証がないまま、五輪に突入した姿が76年前とダブっても仕方ない感じだった。国民の命をギャンブルにするなという声もあったし。
5.怖いマスコミの豹変
戦前の歴史を見つめるとき、大本営発表をそのまま報道していた大新聞の責任云々といった記述を目にしてきたが、信じられなかった。あるわけないやろ、新聞が嘘を書いて国民の命を犠牲にするなんて。民主主義の現代に生きるわたしには実感のない歴史だった。が、今回はマスコミの見事なまでの豹変をしっかり目にすることができた。残念だが。新型コロナの世界的パンデミックのさなかにオリンピック開催とは・・・と言っていたテレビが、五輪が始まると手のひら返し、さっと豹変して「本日のメダルは」と笑顔いっぱいで司会者、出演者がテンション高く報道する。本当に、怖いと思ったなあ。
6.物言わぬスポーツ選手たち
企業や学校でスポーツをしてきた日本選手は、今回の五輪に何か発言しただろうか。個々には悩んだ人もいたと思うが、ちょっと寂しい現実があった。外国選手では、表彰式で両手をクロスしてジェンダー平等を訴えるメダリストがいたし、報奨金や遠征費の男女平等を訴えていた某国女子サッカー選手たちも堂々としていた。日本ではスポーツ選手が政治や世の中に関して発言してはならない、中立性を守れ、とする論調が強い。結果、悪びれもせず、考えもなく、「今大会のメダルが一番うれしいです」と語る選手がいたりする。ちょっと配慮がないよなと思う。感染増大で亡くなっている人がいて、そこでやってる五輪だから、もう少し考えた発言をしろよと言いたくなった。要するに思慮が浅い。そういうスポーツ教育しか受けていないのだろう。だから政治に利用されやすい。これも残念だったことの一つ。
などと、いろいろ考えていたら、今回の東京五輪は(パラリンピックは残っている)将来の転換点となる負の課題を持っていたのだから、教訓を今後に活かしてほしいと思う。選手たちは生活が懸かっている。日本のある卓球女子選手が受け取る報奨金は1,400万円とは週刊誌の見出しだが、卓越した能力には金銭のバックアップ、評価があってしかるべき。選手たちは一生懸命やっているのだから。だからこそ、選手たちよ、もっとかしこくなれ!
さいごに、「2020東京五輪」がスポーツ嫌いの人々を生み、スポーツの価値が低下していないか、そこが心配だ。そうそう、誘致の際は「日本の八月は晴天も多くさわやかな気候です」と演説しているとか。最初から最後までウソが多かった今回の東京五輪。テレビの前で素直に競技を愉しむ気持ちになれなかった人はけっこういたんじゃないかな。
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