阿南市に学ぶ、首長のリーダーシップ

 日本一の野球の町・阿南市(徳島県)を訪問した。四国とはいえ寒さが残る2月10日(金)のことだった。「野球のまち推進課」が存在し、モンゴルの野球場建設補助や東京六大学オールスター戦、甲子園出場高の大会前合宿、あるいは還暦・古希野球西日本大会開催など、青少年から中高年までの各種野球イベントを幅広く実施している姿を学ぼうと思った。

 阿南市出身の元巨人投手・水野氏(池田高校卒)のユニフォームなどが展示された廊下を通って推進課へ入ると四名の職員が快く迎えてくれた。初代の名物課長・田上重之さんの説明を受けた。

 岩浅市長は元軟式野球協会の会長。市長と二人三脚で「3年やってだめならやめればいいや」と腹をくくって野球による町おこし、地域活性化に取り組んできたという。マスコミが注目し、多くの人たちが阿南市を訪れることで市民の意識も変わってきた。旅館、ホテル、居酒屋まで潤う活性化事業。今では年間1億円の事業となっている。

 平成19年の5月には四国一の野球場「アグリあなんスタジアム」(両翼100m、中堅122m)を完成させ、2年前には屋内の多目的運動場「あななんアリーナ」を併設した。どちらも見学させていただいたが、うらやましいくらいに立派な施設だった。

 各種野球大会実施の際にはチアリーディング・チーム「ABO60」が花を添えるという。それは何と年齢がオーバー60の女性たちのグループなのだ。「その大会は担当課のしごとだろ?」。「いや、それは市民の一部が反対するだろうから」とおせおせになったり、全てを平等にと考慮する中でなかなか事が進まないのが行政ではないのか。そう思っていたが阿南市の首長をはじめ役所の皆さん方のリーダーシップや協力が「日本一の野球のまち」を産みだした。

 廊下の階段に杉浦投手(元南海・殿堂入り)のパネルが飾られている。市との縁を尋ねると何もないという。大阪府堺市に住む杉浦忠選手のご遺族が自ら展示を願われたのだ。「わたしどもの手元に置くより阿南市にお預けする方がお役にたてるでしょう」との意思だった。

 全国各地の行政関係者、元プロ野球選手など阿南市を訪れる人は多い。推進課や廊下には、イチロー選手や合宿にやってくる高校野球部のユニフォームなど貴重な品々が展示され、その場にたたずむだけで身が引き締まる思いになる。

 どの町、どこの市でも取り組めそうで出来ない壁、それは意を決する「首長のリーダーシップ」の差ではないのか。徳島大学横の古びた店で「釜玉うどん」を食べながらそんなことを考えた。


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