還暦野球と勝利の関係
兵庫県還暦軟式野球連盟に所属する三木オルウェイズは5月17日までは19位に位置していた。つまり、最下位。3月~4月にかけて0勝4敗の成績だったから当然の結果だった。
5月18日(木)は神戸市名谷公園で須磨スルバーソックスと対戦。ともに0勝4敗で、初勝利を挙げたのは三木。続いて24日は三木山で芦屋還暦野球クラブと対戦して8-1のコールド勝ちを収めた。結果、芦屋とともに2勝4敗となり三木の順位が上昇したのだった。
勝利が続くとメンバーの表情に明るさが出る。ショート後方の小フライにセンターが鋭いダッシュをみせて地面直前にキャッチ。三塁手は難しいショートバウンドを二度、三度と好捕。攻撃ではヴェテラン選手が渋いヒットを連発する。ひとつの勝利がこれだけ選手を勢いづかせるとは・・・今更ながら、スポーツにおける「勝利」の効用を再確認した次第である。1試合目終了後、仕事に向かうわたしに声が飛んだ。「来てくれてありがと、な」と。
5年前、兵庫教育大学大学院時代に「還暦野球をとおして生涯スポーツを考える」をテーマにして、県下の還暦野球選手約300名からアンケートをとった。「還暦野球の魅力はどこにあると思われますか」(自由記述)の問いに対する回答は以下のような内容だった。
・この年齢になっても悔しさ、楽しみが味わえる。
・仲間との交流、ユニフォームの魅力、勝利の美酒。
・同世代がボールを追い、バットを振り、ベースを駆け抜ける爽快感と対抗意識。
・仲間と協力し、チームプレーを完成させ、勝利に貢献できる達成感を味わうこと。
スポーツと勝敗は切り離せない。中村敏雄著作集(創文企画)の第7巻「スポーツの思想」194ページで中村は、近代スポーツが持つ弱者への冷酷な一面(能力主義)を念頭に置きながら、次のように述べている。
「健康の保持・増進を目的にジョギングを始めた人が、やがてそのスピードや走る距離が向上してくるとマラソン大会へ出場しようと考える」。「スポーツには健康づくりの目的を勝敗を競う競技へと転換させる魅力があるが、一体それは何か」。
それは何か?中村教授いわく「人間は自己の可能性を追求・実現しようとする意欲が強く、しかもそれを他者との関係の中で実行・比較しようとする傾向を持ち、このような要求を基底につくられた文化がスポーツであるということができる」。
「勝つ」ための選手起用や公平性は別問題としても、やはり野球は勝たないと良い雰囲気は生まれないし、勝利を目指すところに還暦野球の魅力もあるわけだ。2勝して、そこに貢献できて、やっとわたしもチームに溶け込み始めたようだ。
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