惜春の西脇市民球場へ

 人生は10年単位で予想もしなかった状況が起きる。今回もそうだ。

 50代は5度アメリカへ渡って「ベースボール」を経験した。サンディエゴ、ロサンゼルス、ベロビーチ(当時のドジャータウン)。早期退職もあった。60歳代になるが大谷選手が登場する前年の秋、同じマウンドで投げる機会を得た。アリゾナのテンピ・ディアブロ・スタジアム。ロサンゼルス・エンジェルスのキャンプ地である。

 60歳では兵庫教育大学の大学院へ入学して教授や若い院生から刺激を受けた。多くのことを学んだ日々だった。大学構内の食堂や喫茶店で語り合った時間は貴重な思い出である。彼らは研究者の道へ、自分は実践の道へ。一念発起でNPOを設立。硬式野球の地域クラブも誕生させた。そこから障害者支援のB型事業所が生まれ、今日に至っている。障害者事業所を維持、発展させるために夫婦で懸命に生きた10年だった。

 10年を終えNPO理事長を後進に譲った。1月からは「自由な身になるぞ」とあれこれ、やりたい事柄を思い浮かべて70代の人生設計をしていた。そこへ突然「西脇軟式野球協会理事長」の話が。公職経験の少ない人間としては評価をいただき幾分うれしい気持ちも正直存在はしたが、「しんどいなあ」と感じた。「自由」から「束縛」の世界へまた戻っていくのかと思案したものだ。受諾の要因はふたつ。かつてわたしは軟式野球「日野クラブ」で約30年プレーし、協会には大きくお世話になっている。最近では「鈴木啓示 草魂カップ」少年野球大会を9年間実施していただいた経緯もある。そして決め手はこうだ。「今協会は力が低下している。ある意味ガタガタや。それを立て直してほしいんや」(副会長談)。

 昨年12月の臨時理事会、本年1月8日の理事会を経て、わたしの理事長生活が始まった。1月13日(日)は西脇軟式野球協会総会。学童(小学生)チーム、一般成年チーム代表による会議だった。40年ぶりに見る総会は正直寂しいものだった。チーム数が減少している。兵庫県軟式野球連盟の資料によれば、西脇支部は成年が8チーム。県下25支部中22位。最少支部は相生(あいおい)の6チーム。それに続くのが、西脇・上郡・淡路の8チーム。野球人口の減少は西脇市だけの問題ではないのだが。篠山市の副会長によれば「うちもかつては40チームあったのに今は20ですよ」、とのこと。逆に古希野球で通う三田市は100チームを維持しているから創意工夫による努力の内容を調査することも必要だ。

 あれこれ思いを巡らしながら2月19日(土)チャレンジカップ(小学4年生以下の大会)の理事長生活初となる大会を迎えた。4年以下が懸命なプレー、投手のコントロールもよく、緊迫した試合内容が続く。「チャレンジとしてはレベル高いよ」とネット裏の審判席。試合前には審判団と塁審を手伝う保護者による打ち合わせ会もあった。審判団のやる気が学童にうつったかのような好試合だったといえる。翌20日(日)は第76回県民体育大会西脇支部予選。初戦登場のNは教え子3人がまとめるチームだった。15歳だった彼らは40歳を超える年齢になっていた。笑顔の再会。

 好プレーに喜び、大人たちの珍プレーには涙を浮かべて笑い転げる審判団。「明るい雰囲気じゃないか」、わたしは愉しい気分になった。確かにチーム数は減ったが、選手や役員・審判は一所懸命自分の責任を果たそうとしている。拙い判定があればネット裏で若手を指導する審判部長の姿がある。素直に耳を傾ける若い審判がいる。大会日程や審判の謝礼計算事務、あるいは弁当購入に「ほっともっと」へ車を走らせる副理事長がいる。縁あって協会理事長の職に就いた自分も責任を果たさないといけないと痛感した二日間だった。

 現在西脇市に所属しているチームにまず喜んでもらうことだ。それがわたしにできること。神戸の友人・Sさんから「ほっともっとフィールド神戸で交流試合をしませんか」と申し入れを受けた。3月19日(土)のこと。うれしいことにRチームが手を挙げてくれた。家族や子ども、彼女も楽しめるからねと宣伝しておいた。「NPB(日本プロ野球機構)の審判になりたい」夢を持つ高校生(1年生)に声をかけると、「審判の勉強をさせてください」と返事があった。審判のためには英語が必要とM高校国際総合学科を受験し、21日に合格発表。西脇市からプロの審判を生むという夢実現の第一歩?わたしの歩みが始まった。

 これからのシーズン中は全ての土日が市民球場での生活となる。大変なはずなのに、どこか楽しい時間、懐かしい時間と感じる自分がいるのだ。ベンチを眺めて「ここにS監督はじめみんなが座っていたなあ」とかつての仲間を思い浮かべる作業もわたしに惜春の想いを抱かせてくれて、西脇軟式野球協会理事長は楽しく、よいスタートを切っているようだ。


シニアの昭和史 独り言 (還暦野球スポコラ改題)

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