アリゾナ野球の旅(3)
アメリカ時間30日の月曜日、いよいよ大会が始まる。試合開始直後にわたしは二つのミスを犯していることに気付いた。
まずはスパイクの選択を誤った。ニュースパイクを馴らす時間がなく(仕事と長雨で)使い慣れたゴムいぼの古いものを持参した。それが滑るのだ。こちらのアンツーカーのような土質にゴムのスパイクでは踏ん張りがきかない。2004,2006年のベロビーチ(フロリダ)ではカネのスパイクシューズを使用したではないか。
もう一つは塁間の距離とマウンドからホームへの距離が正規のものだった。日本の還暦野球では投手版と本塁までの距離は16.3メートル。正規の距離は18.44メートル。塁間は25mで正規のそれより2.43m短くなっている。そもそもアメリカ人には年齢に応じてルールを変更するなどの発想はありえないのだろう。ベロビーチのドジャース・アダルト・ベースボールキャンプではマウンドが約60cm短かったのに。これは参った。
さらに体調の悪さが追い打ちをかけてくる。昨日の練習で翌日は肩が重くなり確実にパフォーマンスは上昇するはずなのに、軽い。肩が抜けるように軽い。ブルペンではコントロールもままならず、投手歴40年で最低の状態だった。練習不足?長雨の影響?時差?それとも単なる年齢か。
初試合では同点の場面で送りバント。監督が来てしつこく「君はバントが出来るか?捕手がいいのでうまくやってくれ。できるか?」という。「オーケー」とうなずいて一塁側へピッチャーが走ってやっと追いつくほどの絶妙なバントを転がした。「日本人を見直したか」と言いたいくらい。次打者にヒットが出てわたしの技が注目された。ゲームへの参加で体中からどっと汗が出て、全身が軽くなって、やっと投げられる状態に戻ってくれた。
1試合目は6-6の引き分け。6-0から追いつかれ、明らかに先発投手に疲労が見られるのだが、マウンドの本人が替わろうとしない。監督もなぜか遠慮をしている。6回あたりにリリーフを送っていれば勝てたゲームだった。アメリカ人の「俺が、オレが」の悪い面が出たようだ。
2試合目の9回にマウンドへ。被安打1で無失点。存在感を示したかな?試合は夜8:45までのナイト・ゲーム。芝の緑がカクテル光線に映えて、まるで「フィールド・オブ・ドリームズ」の世界だった。愉快なミーティングでは罰金の取立てが行われた。君は遅刻したからファイブ・ダラーズなどと次々に罰金が科される。とにかく彼らにはユーモアがある。
月光の中を車へ歩いていたら、#42の男がわたしに言った。「このようなフィールドがこの近辺には20くらいあるんだ」と。「あかんわ、日本はどうあがいても勝てない」。このすばらしい野球環境に接していると、MLBを頂点とするピラミッドが理解でき、貧しい環境の日本ではある種ゆがんだ形で、高校野球を頂点とする野球として発展せざるを得なかったように思えてくる。
明日はエンゼルスのキャンプ地でメインとなるりっぱなスタジアムで投げることが出来るのだ。何はともあれ、ベースボールを愉しもう。
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