スポーツ団体と理念
NPOを立ち上げるときも、障害福祉事業に乗り出すときも、指導を仰いだ先輩たちは異口同音口にした。「設立当初の理念だけは崩しちゃだめだよ」と。
21日は中学生の硬式野球クラブ「西多可シャイン」のコーチ会議に出席した。西脇市黒田庄町の「ふれあいスタジアム」に隣接するドリームボールで熱いコーヒーを飲みながら平成30年度の組閣会議となった。部活動を終えた地域の中3生が参加し、西脇工、多可、社、小野工など地域の高校野球に人材を送ってきた「シャイン」の発展、継続は共通の認識。問題は代表と事務局を誰にするかだった。
ここ2年、わたしは多忙と後継者づくりのために代表の座を譲っていた。特定の個人がながく組織運営に携わると弊害も起きる。3年でチームの基礎が出来たし、いい時期だよなと思った。だが6年目を迎える今季からもう一度代表に復帰せざるを得なくなった。コーチから新監督に昇格するOさん、コーチ3年目を迎えるIさん、2年目から本格的に中学生を教えたいHさん。彼らのまじめさに打たれ応援したくなって引き受けた。
彼らならやってくれるだろう。兵庫教育大学の学生との合同練習。神戸弘陵学園女子硬式野球部や淡路ベースボールクラブとの交流。中学球児の視野を広めるための和歌山遠征。わたしが大切にしてきた「野球を通じての人間形成」が復活することを願って代表に戻る決心をした。
新スタッフは20日(土)にプロ関係者の野球教室を持った。教室と言っても、たまたま実家に立ち寄った阪神タイガースでブルペン捕手を務めるH君(中学校時代の教え子)が中学生たちに野球への心がまえをひと言伝えるだけの場だった。H君いわく「球団に申請していないので実技指導は遠慮させてください」。しかしうれしかったね。H君の中学校時代の野球部メンバー3人もやってきて三十数年ぶりの再会となった。
夜はH君の後輩が経営する焼肉店で食事。今年の12月には球団へ申請を済ませて本格的に中学生にプロの技を伝授してもらう約束が出来た。炭火の肉を食べながら彼がいった。「ぼくもできるだけ長く野球に携わるので、先生も元気で野球に関り続けてください」と。前立腺肥大手術から丸一カ月を経て「もうういいか」とばかりにビールを口にしたから酔いも手伝ってH君の言葉がはらわたに浸みた。
スポーツの組織、団体には固有の理念があるべきだ。野球を通じて「何がしたいのか」。勝った負けたや技術指導だけではない何かを持たなければならない。スポーツ文化学の先駆者であった中村敏雄氏は次のように述べている。「勝利追求はスポーツの一面ではあっても全てではない。もっとも重視、尊重されるべきは、人々の親和的関係を深め、コミュニケーションを充実させることである。われわれがスポーツの社会的存在を認めているのは、スポーツのこのような価値を認めているからであって、メダルの多さを他国に誇るためではない」。
前立腺肥大手術から40日が経ち、少しずつトレーニングできるようになった。単なる勝敗を超えて人生の深いところでつながる古希野球への参加がもうすぐそこに来ている。西多可シャインと古希野球三田プリンス。H君との再会でまたわたしの野球への情熱に火がついた。今年も「理念ある野球」に出会いたい。
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