「人生はそれでも続く」

 23日(祝)は冷たい雨が降っている。体が重い。3月から現在まで続いたシーズンの疲労がどっと出ている感じだ。それも当然か。21日(月)で古希野球のすべての試合が終わるはずだった。兵庫県還暦野球連盟の古希の部は東地区、西地区に分かれて(各7チーム)リーグ戦を行い、各優勝チームで一位決定戦を実施することになっている。

 その試合が21日の予定だった(深江球場)。西の播磨ナインスターズは12勝0敗の完全優勝で、われわれ三田プリンスは9勝3敗の東地区優勝。納得のいく敗戦なら気持ちよくオフを迎えることができる。投手のプライドにかけて情けないピッチングは出来ないぞと、調整には細心の注意を払ってしっかりと練習を行ってきた。そして21日当日、三田駒ヶ谷運動公園からマイクロバスが走り出し、シートベルトもしっかり着用したとたん、県連事務局Iさんの携帯が鳴る。「グラウンドコンディションが悪いため、本日は中止。28日に延期となりました」。「また一週間練習や」と思ったら疲れがどっと出たというわけ。

 「それでも野球は続く」ってところだが、今日のテーマはそうじゃなくて「人生はそれでも続く」。「鈴木啓示 草魂カップ学童軟式野球大会主催者の〇〇さんでしょうか、わたしは読売新聞三田市局のTと申します。12月4日から始まる大会をのぞかせてほしいのですが」と携帯に電話が入った。すでにプロ通算317勝投手(歴代4位)の鈴木啓示さん(西脇市出身)から聞いていた。「読売新聞がわたしのことを書くそうですよ」と。そのことかと快諾したら17日の還暦野球を見学がてら駒ヶ谷球場へ赴きますとT記者がいった。

 聞けばすでに取材も一度済んでいるとのこと。月に一度読売新聞が1ページを割いて、さまざまな人を取り上げる企画が「あれから」。社会的に騒がれた人たちのその後の人生を取材して紙面にするという。試合後のあわただしい時間だったが、読売の考えに賛同を覚えた。近鉄バファローズの監督時代に野茂英雄投手(のちドジャーズ)との確執が伝えられ、トレーニング・コーチの立花龍司氏が退団、あるいは吉井理人投手(新ロッテ監督)のヤクルトへのトレードなどが重なり、世間では鈴木さんの監督としての能力や人間性へのバッシングが起きた。野茂投手が13勝6敗の成績を残しドジャーズで成功したことが批判に拍車をかけた。それが今も鈴木さんへの評価に影を落としている側面がないとは言えない。

 読売の思い切った企画に賛成ですとわたしは言った。この10年お付き合いをさせていただいて、「鈴木さんが好きになりました。本当に武骨な努力家で野球一筋、お世辞や上手な世渡りとは無縁な人ですから」。鈴木さんが監督を務めたのはわずか3年に満たない。長嶋茂雄氏は監督一年目の1975年に最下位となったが、解任を経て復帰し計15シーズンにわたってジャイアンツを率いた。15年だ。王貞治氏は巨人で5年、ダイエーで14年(内ソフトバンクが4年)監督を務めたが、巨人を追われ、ダイエーでは1996年の6位時代にはファンから50個の生卵や石を投げられ、「出てきてあやまれサダハル」などと罵倒されたこともある。「世界のサダハル・オー」なのに。

 鈴木さんと親しかった故星野仙一氏も中日、阪神、楽天で計17年の監督生活を送った。「名選手かならずしも名監督ならず」だが、これだけチャンスが与えられたら監督として成長するのは当たり前なのだ。三者とも学ぶ時間はたっぷりあった。もし鈴木さんに再登場の機会が与えられていればその後の監督人生は一味違ったものになったとわたしは確信している。学童のプレーをやさしく見つめる眼に、監督としての素質を垣間見ているのだ。

 「あれから」が本になっていた。「人生はそれでも続く  読売新聞社会部 あれから 取材班」(新潮新書)。早速購入して読んだ。映画「典子は、今」のサリドマイド薬害被害者の白井のり子(現在)さんのその後の人生など、興味深い内容だった。年明けに鈴木啓示さんの人生がどのような切り口で語られるのか、わたしはしっかりと見つめていたいと思う。

 テレビドラマの中のセリフ。「人生の8割は失敗でできている」。教師として、人間として親として、わたしも8割の失敗を重ね今日に至っているのだろうか。だが、と思う。人は死ぬまで成長で、亡くなる瞬間にどの高みに到達しているか、人間性を高めているかが人生の評価ではないかと。過去の一瞬でその人のすべてがわかったようなふりはやめよう。「人生はそれでも続く」のだ。がんばれ読売、頼むでT記者!


 


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