人の心を温かくする野球
マリナーズに復帰したイチロー選手が開幕2戦目でマルチ安打&超美技の活躍という。今朝のわたしは3度、4度とビデオをクリックしていた。かつて5度訪れた懐かしのシアトル(ワシントン州)は緑豊かで清潔な街だったから、イチロー選手の復帰はことのほかうれしい。彼の活躍は多くの日本人に野球の素晴らしさと、大げさに言えば「生きる喜び」すら与えてくれるのではないか。野球を始めとするスポーツは、いつもそうあってほしいものだ。
昨日観戦の兵庫県高校野球春季大会もわたしにとっては「人生のすばらしさ」を実感できる内容だった。3月31日、春爛漫の三木市防災公園野球場では、西脇工業高校VS県立農業高校の試合が行われていた。高校野球は地域予選であっても観衆の数がすごい。西脇工の一塁手、あの太めの体格はY君だな。ショートを守るのはS、彼は中学時代大事な場面で神がかり的な安打を打ったものだ。ライトにはK選手。センスのよいシャープな動きを持つ選手だったが中学時代はちょっと細身で静かな子だった。
なぜ知っているのか。わたしと仲間が「NPOスポーツアカデミーShine」を創設して「地域による地域の中学生育成」をテーマに部活動終了後の中3生を対象に硬式野球チームを結成したのは5年前のことだった。そのクラブチームから150人近い高校球児が生まれている。ひとり一人の顔やプレースタイル、保護者の姿まで、記憶は鮮明だ。
2試合目はこれまた地元の西脇高校VS多可高校。3月24日のことだった。西脇市黒田庄町のふれあいスタジアムで西脇高校の保護者と出会った。「今度、多可高校と試合をしますよ。どちらもシャインの子がたくさんいます」。笑顔で語ってくれたのは息子さんが西脇高の三遊間を守るAさんとTさん。ともに「西多可シャイン」(わたしたちのチーム名)の卒団者。さらに居合わせたある保護者が「ああ、センセイ!」と叫んで寄ってきた。エースのお母さんだった。というより西脇中時代に担任をした、かわいいHではないか。Hの主人も西中時代の陸上部生徒。二つの同窓会を一度にやってる感じのスタンド風景となった。
エースの父親(走り高跳びの選手だった)がいった。「センセイに、もうお前らの面倒は見ないといわれたからなあ」と昔の怨念を口にする。三木の別所中から32歳の春に地元西脇中へ異動したら陸上部の顧問が回ってきた。正直、締まりのない部だった。生徒も赴任一年目の先生にはなかなか馴染めない。後に県下最大の人数を誇る陸上部に成長するのだが、Hくん、あの頃は「すまない」。そんな気も手伝って31日は是が非でも観戦しなくちゃと思った。
西脇高と対戦する多可高校の主将K君もシャインOB。さらに父親(保護者会長)は元生徒。その多可高校では6人のOBが先発メンバーに入っていた。偶然に出会ったわがコーチの石垣さんとふたり、ライトポール後方の芝生席で「焼肉どん」をかきこみながら高校生のプレーを愉しんだ。
甲子園の高校野球はすばらしい。遠方の私学で寮生活を送りながら野球に没頭する高校生も偉い。同時に、こうやって普通の高校生活を営みながら野球に取り組む地元公立高校の生徒たちもなかなかいいものだ。兵庫県では公立校のレベルが向上し、どこが甲子園に出場しても不思議でない状況が続いている。そんな状況下での地区大会。
今夏は記念大会となり、兵庫から2高が甲子園に出場できるという。それだけに指導者も生徒も親も、高校野球本来の姿を忘れずに、人の心にぬくもりを届けるような野球を展開してもらいたいと願う次第。
多くの見知った生徒や保護者に接し、桜の花が一層綺麗に見えた高校野球観戦だった。
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