古希野球の「Sho time」
大谷翔平選手(エンジェルス)の活躍が全米を興奮の渦に巻き込んでいる。ワシントン・ポスト(電子版)は大谷選手の二刀流に「グレート・バンビーノ(ベーブ・ルースの愛称)を超えた」と称賛を贈っている。
日本のプロ野球評論家は(一部ではあるが)、「二刀流では優れた成績は残せない」といい、頭の固いある人物は「(今の活躍は)まぐれか大リーグのピッチャーの力量が落ちているかだ」と酷評する。どうして素直に褒めないのだろうか。日本の若者が投手、打者の両方で果敢に挑戦しているそのときに批判ばかりは情けない。
その点、アメリカ人の反応はすごく単純で素直だ。劇画の世界のようだと感嘆し、家族連れが大谷選手のTシャツをこぞって買い求める。彼らは夢と挑戦が大好きだ。ベースボールにロマンを求める。投げてはバッタバッタと三振を取り、打ってはホームランの放物線。その昔日本の子どもたちが原っぱや神社の境内で親しんだ三角ベースの世界がそこにある。
彼の活躍で寝不足になっているわたしは(BSの大リーグニュースは午後11時なのだ)寝起きのぼけた頭で、4月9日(月曜日)早朝6時10分に家を出た。今シーズンから古希野球「三田プリンス」の練習生となったわたしは職場に休みをもらい、姫路市の白浜新開球場に向かって車を走らせた。中国道加西インターから播但道を経て走ること90分。潮の香りを含んだ妻鹿漁港の空気に触れる。海からすぐの所に球場があるのだ。
古希野球の公式戦。対戦相手は姫路チャンピオン。前回に完封勝利を飾ったN投手が先発(写真の人)。わたしの仕事はレフト側ファウルエリアで椅子に座ってのボールボーイ。皆を手伝うことも大事なプレー。応援むなしく、守備の乱れが大きく響き1-5の敗戦ではあったが、80歳の監督や70歳代半ばの人たちが元気にプレーする姿には感動を覚える。
第二試合は交流戦だからわたしも出場することが出来る。「竹本、先発で行け」。たまにしか参加できないわたしにチャンスをくれるという。こちらは69歳まで4ヶ月と少し残っているから、古希野球で活躍できて当然なのだが、なかなかそうはいかない。油断は禁物なのだ。みなさんレベルが高い。
還暦野球時代はこの球場でよく負けて苦い思いをした。でもね、今のわたしは違う。昔もよかったが今はもっといい球を投げるんだ。阪神のブルペン捕手H君から二度の特訓を受けピッチャーとしての技術が大きく飛躍し、安定してきた。スターティングメンバーの発表。「四番 ピッチャー 竹本」
1回裏のマウンド上でわたしはつぶやいた。「It's show time !」。2安打されたが5イニングをセロに封じた。打ってはライト前と左中間へ2本のヒット。外角速球で三振を取るってのはいつも最高の気分だ。ツーシーム(シュート気味に沈む)で空振りさせたときも頬が緩む。
投げさてもらえることがありがたい。古希の仲間に入れてもらってありがとう。「来年から君が来るのでみんな元気になっている。オレも試合に出るがな、いっしょにプレーしたいからなあ」と電話の向こうでNさんがいう。
試合後は三田プリンスN監督のお友だち(姫路軟式野球協会の役員さん)から回転焼「御座候」の差し入れがあった。試合後の空腹にしみこんだ。古希野球ならではの楽しいひと時を過ごし、プリンスの面々はマイクロバスで三田へ帰って行った。わたしは車で1分の妻鹿漁港の店へ直行。写真のような「海鮮丼」を注文した。
海を眺めながら1,100円なりの海の幸をいただく。投げた後で重くなったからだが好きである。けだるさにも充実感があって、「生きてるなあ」と思える瞬間だ。職場の人たちにちょっと後ろめたい気もあるが、「ハハハ、俺は古希野球の大谷翔平だぁ」とつぶやいてどんぶりいっぱいの刺身を味わったのだった。野球は何歳になっても「ありがたい!」
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