団塊世代の野球

  久しぶりのフレーズかもしれませんが「団塊の世代」。狭義には1947(昭和22)年~1949(昭和24)年に生まれた人たちを指すが,広義では昭和21年~25年生まれをそう呼ぶらしい。「〇〇歳の壁」云々といったテーマで語っているある精神科医は、「70歳になるということは、自由になること」なのかもしれませんと説く。「何ごとも遊び半分」が脳を老化させないコツだといい、「遊び半分」を肯定したのちにこんなことをいうのだ。「とくに団塊の世代は、真面目な努力家が多いので、その傾向(遊び半分を否定する)があるように思います」と。

 わが還暦野球の現場は、その団塊の世代が相当数を占めるようだ。よって超まじめ。だが、実際は大変だ。耳は遠くなり、目には自信がなくなって、もちろん脚力も衰え、外野守備などもろにその影響を受ける。平凡なフライでもちょっと前に走ればボールが激しく動く。後方のボールなどもってのほか。キャッチできるわけがない。往年のファインプレーなどはるか彼方に行ってしまった感がある。

 その中でわが三田プリンスは、今シーズン、還暦が4連勝。4-2宝塚、2-1須磨、6-4兵庫、そして昨日、3月30日は芦屋CSに4-3で辛勝(於 三田谷)。対芦屋では1点リードの7回表、芦屋CSの攻撃は二死二塁、一打同点の場面。そこで飛んできたのがライトフライ。わたしは古希では投手なのだが還暦の試合ではライトで8番に入ることが多い。ということは最後の打球はわたしに襲い掛かったわけである。セカンド後方への打球、わたしは懸命に走る。左右にぶれる打球に必死でグラブを出す。二塁手のT君が「あんな真剣な顔は初めて見ました」と驚いた姿は、さすが団塊の世代。皆に心配をかけた危うい守備はなんとかボールをグラブに収めていた。

 WBCの野球を見た、センバツ高校野球もやっている、プロ野球も開幕した。還暦野球にはその世界でプレーした人も、そこをめざした者もいる。しかししかし、年齢は正直で酷なのだ。すぐに太ももの裏を痛める、ふくらはぎの肉離れも多い、他人の姿が目に入らず、頑なに己のスタイルに固執する、つまり他者のアドバイスが耳に入らない、よって失敗した選手をもろに批判する、それも大声で。批判には批判、互いに怒鳴りあう。それが根に持たない「ガキのけんか」状態で進行する。笑えない、というより笑うやり取りの連続。

 確かに体調が万全という日が続かない。体には若いころのようなバネがない。ピッチングのフォームも日によって変えなければならない。ということは、かつて経験したことのないところへ向かっているのが還暦・古希野球の世界なのだとハタと気づいたのがくだんのライトフライ。これって、新しい経験やん、衰えた身体能力の中で懸命に限界とたたかう、これを称して、「新しい世界への挑戦」とひそかに名付けてみた。なぜかワクワクしてきて、「未知への遭遇」とも呼んでみた。

 老齢化を否定的にとらえるのではなく、至極当たり前のこととして肯定すればそこに新鮮な挑戦心が湧く。おもしろいやん、と思える世界が眼前に広がっている。そこでスポーツライターを自認するわたしは、「スポーツと社会」に関心が向いて、本棚から一冊の本を取り出す。「団塊ひとりぼっち」(山口 文憲著 文藝春秋刊 890円+税)。

 本の巻末に在る「団塊世代関連年表」からわたしの生まれた1949(昭和24)年に焦点を当てると、生まれた年に映画「青い山脈」(今井正監督、池部良、杉葉子)大ヒット、「きけわだつみのこえ」刊行、そしてプロ野球が2リーグ制に。2歳で「貧乏人は麦を食え」池田勇人蔵相発言、1951年NHK紅白歌合戦初放送、力道山プロレス初試合、1952年講和条約、日米安保条約発効、1953年NHKがテレビ放送開始、1954年第五福竜丸被爆などなど延々と続く。

 1961年(小6)では小田実「何でも見てやろう」がベストセラー、加山雄三「若大将シリーズ」第一弾、1962年(中1)で映画「キューポラのある街」で吉永小百合大人気。わたしは「サユリスト」に。1963年に力道山刺殺事件、翌64年はあの東京オリンピック。わたしは叔父と開通まじかの新幹線に乗ってオリンピック観戦に赴く。と、日本が若かった時代が蘇る。

 そういう時代を駆け抜けて今、団塊の世代は76歳~74歳(狭義)を迎える。まだ老いちゃあいけないよ、中3で井沢八郎の「あぁ 上野駅」、「どこかに 故郷の 香りをのせて 入る列車のなつかしさ 上野は俺(オイ)らの 心の駅だ くじけちゃならない 人生が あの日ここから 始まった」を耳にした「集団就職」を知る世代は、やはり人生の最後まで「心の青春」を生きねばならない、そうじゃありませんか。

 こんなことを思い浮かべながらグランドに立つと、感謝と勇気があふれるというものだ。4月には古希野球公式戦が10日を皮切りに3試合組まれている。今回のブログは「学生時代とは何か?」について書くつもりが支離滅裂になった。けれど、懸命に限界とたたかう還暦・古希野球選手の姿が彷彿としているなら許してもらいたい。本人は「生きるっていいなあ」と感じているはずだから。



 

 

 


シニアの昭和史 独り言 (還暦野球スポコラ改題)

輝くシニア発掘~中高年に励ましを~

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