流されやすい日本人⁈

 マスコミは怖いなあと思う。何があったときなのかは忘れたが、いや思い出した、東京オリンピックのときだ。コロナ大流行のさなかに、国民の中では「オリンピックをやるなんてどうなんだ」といった論調が多かったが、大新聞はオリンピックありきで論調を張ったように記憶する。政権党あげて「実施」。すると新聞もそれに倣った、と思う。

 わたしたち団塊の世代は戦後生まれだが、両親や流行歌の影響で戦争を身近に感じて生きた世代である。お墓に行けば戦没者の碑が並んでもいた。我が家には二人の戦死者がいる。だから「大本営発表」が嘘で、新聞がそのまま報じていたなんて許せないと思っていた。怖いことだと思った。同時に、なぜ大新聞までもが大本営発表に同調したのか信じられなかった、ながい間。

 世の中がどこかへ流れる、反論は抹殺される、その怖さは先般の東京オリンピック開催時に実感として理解した。ある日を境に世論は急転する。そのかじ取りはマスコミがやるのだ、とわかった。今回のWBC大会でも同じような傾向が見られた。テレビは大会が終わっても毎日「WBC」。ネットを検索しても「WBC」「WBC」。きょうでも。こんなひねくれた感想はわたしだけかとちょっとがっかりしていたら、ネットに同意見が流れていた。

 「朝から晩まで続くWBC狂騒の薄気味悪さ。異様な同調圧力。コメンテーターはヨイショ一辺倒」と批判したのはスポーツジャーナリストの谷口源太郎氏(日刊ゲンダイDIGITAL 4月4日11:00配信)。詳細に引用すると。「日本代表の奮闘には敬意を表するが、大会期間中とその後の報道には辟易しました。特にテレビのワイドショーは、この国のニュースはWBCしかないという様相」と谷口氏は嘆く。

 まるで明治時代?富国強兵政策で「欧米に追いつけ」とガムシャラに走ったあの時代。だから「アメリカに勝った」となるともう大騒ぎ。WBCをめぐるMLBの戦略などはどこかに吹っ飛び、勝った、勝ったと大喜びとなる。その陰で、オープン戦から順調に投げる菊池雄星(トロント・ブルージェイズ)の変身ぶりや、トミージョン手術から復帰に賭ける前田健太(ミネソタ・ツインズ)のニュースはわたしたちに届かない。メッツの千賀投手や、マイナーでシーズンを迎えた筒香選手の近況も知りたかったが、わずかの情報しか入らない。

 マスコミ報道は平等であってほしいものだ。ダルビッシュ(パドレス)がやっと強い球を投げだした。大谷翔平(エンジェルス)は変わらず二刀流で成果を出す。ボストンに渡った吉田選手(レッドソックス)もグリーンモンスター越えのホームランで地元ファンのハートをつかんだ。だが吉田正尚選手はその後2試合は無安打で打率は2割ジャスト。MLB投手にアジャストする厳しい日々が続いているようだ。国内ではWBC大会で小指を骨折した源田壮亮選手(埼玉西武ライオンズ)はまだ復帰できない状態となっている。かたや水泳の日本選手権も行われている。

 確かに新聞は購読数も減り、スポーツ新聞社への就職希望者も少なくなり(とあくまで予想)、「売れる記事」が求められる必然性は理解できるのだが、そのためにこそ、全てのスポーツを平等に扱い、現場の選手たちやスポーツファンを励まし、生きる喜びを与えてくれる報道が待たれる。北海道日本ハムファイターズの新しい球場「エスコンフィールド」の施設内容は、その評判は。読売ジャイアンツのユニフォームが今シーズンからナイキに変ったのはなぜ、その経緯は。ビジネス戦略は?などなど、スポーツファンはそれらも知りたいと思うのだ。

 わたしはマスコミの世界で懸命に働く人たちに大いに期待している。スポーツ人口、野球人口の減少。学校部活動から地域クラブへの移行とその課題、問題点。その先にある子どもたちの健全な成長。日本スポーツのあるべき未来。それらを大きな視野で国民に伝えていってほしい。まっすぐな眼で伝えてほしい。それはあなた方にしかできない意義深い仕事なのだ。

 




 

 

 

シニアの昭和史 独り言 (還暦野球スポコラ改題)

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