高校野球の改善は無理だろう

 はっきり言おう。日本における高校野球は肥大化し、商業化し、プロ野球のための選手輩出機関と化した現在、個々の指導者や関係者の努力で改善される部分は小さい範囲にとどまると思われる。要するに期待できない、ということだ。今となっては高校野球が壊れるまで、選手を犠牲にしながら(学業と身体のみならず、精神をも)進んでいくしかない。

 その中で自分の子どもを育てるのか、別の道を選択するのか、保護者や関係者に問われることは多い。アメリカでも有能な選手を売り込むために無理をさせ、ひじや肩を痛める子どもたちが多くなって、MLB(メジャーリーグ機構)は投球数ガイドラインを発表した。「ピッチスマート」である。

 ピッチスマートによると、11~12歳では1日の最大投球数は85球。日本の小学5~6年生に当たる年齢だろう。66球以上投げると4日間の休養を取らなければならない。中学生クラスになると、76球以上投げると同じく4日間の休養が必要とされる。年齢にかかわらず、1日に21~35球以上投げた場合は1日の休息時間がいる。

 毎週試合が続く日本の学童が心配だ。スポーツに詳しい「しんぶん赤旗」が古島医師(慶友整形外科病院スポーツ医学センター長・群馬県館林市)へのインタビュー記事を掲載している。古島医師によると、「小学生で肘を痛めた場合、約半数が高校で再発する」という。1500人の小学生を検査すると、ひじの内側の障害が540人(36%)。外側の障害は46人(3%)だった。

 医師がドミニカを訪問した際には障害発生率が極端に低い(日本との比較)のに驚いた。おおらかな環境、短時間練習、健康第一の指導者の姿勢、追い込まれることのない試合風景。ドミニカはMLB選手882人中実に102人の大リーガーを輩出している。 

 アメリカでは甲子園大会に相当する全国大会がない。7イニング制である。普段はリーグ戦が中心である。加えてピッチスマートによる基準がある。今回問題となった大船渡高校の佐々木投手の場合、7月16日:19球  18日:93球  21日:194球  24日:129 (米国在住・谷口輝世子氏)   

 これは日本だから許される球数であって、MLB基準では3試合とも4日間の休養が求められることになる。佐々木投手が決勝戦に投げなかったことについて、7月28日のサンデーモーニングで張本勲氏は「最近のスポーツ界でこれが一番残念」と発言し、MLBのダルビッシュ有投手は「勇気ある行動」と反論。サッカー界の長友選手は「日程を考えるべき」と発言した。桑田真澄氏(元巨人)は、「主催者はルールをつくって選手と指導者を守るべき。球数制限があればだれも文句が言えない」と明確な意見を述べた。

 確かに高校時代から毎日300球を投げ込んで、プロでも300勝を超える成績を残した元名選手の意見も傾聴に値する。「(300球の投げ込みは)10人いたら8人までは故障する。しかし体が頑丈な2人はその厳しい練習で頭角を現す」。指導者の力量も大いに関係する経験者の意見である。

 揺れ動く高校野球。今こそ冷静な目で高校野球の行く末を見つめていかなければならない。「高校野球」になると一億総・・・ではあまりにも寂しい、と古希野球選手のわたしは思う。だが、改善への期待感は極めて薄いと言わざるを得ない。

   

シニアの昭和史 独り言 (還暦野球スポコラ改題)

輝くシニア発掘~中高年に励ましを~

0コメント

  • 1000 / 1000