名球会選手の顕彰
阪神タイガースのルーキー近本光司選手がセ・リーグ新人特別賞を受賞した。長嶋茂雄のセ・リーグ新人最多安打を61年ぶりに更新し、盗塁王も獲得。加東市の担当者は近本選手が高校時代に走った道を「近本ロード」と名付ける意向を示した(11月28日付神戸新聞)という。
早いもので、もう7回目を迎える。NPOで地域の子どもたちを育てたい、そんな話が「西脇時報」(休止)に掲載されて、それを見て「わたしにできることがあれば遠慮なく言ってくださいよ」と、わざわざ電話をよこしてくれた人がいた。8年前のこと。その人は、プロ通算317勝を誇る西脇市出身の鈴木啓示さん(元近鉄バファローズ投手、監督)、勝利数歴代四位の名球会選手である。
「鈴木さんの名を冠した少年野球大会を創ります」。約束したわたしは現西脇市議のSさんに協力を依頼し、以後二人三脚で「鈴木啓示 草魂カップ軟式少年野球大会」を育んできた。西脇軟式野球連盟、北播少年野球連盟がともに実行委員となり、その現場の努力が7年間の成果を生んだ。
わたしたちは年に一度、大会の際に顔を合わせ、ラーメンや弁当をともにしながら子どもたちの懸命なプレーを見つめてきた。2019年11月24日(日)午前8時30分、西脇公園野球場に大きな声が響いた。72歳だが張りのある声だった。
「プロ1年目のオールスターゲームでのこと、先ほど亡くなられた400勝の大投手金田正一さんにカーブの投げ方を教えてほしいと頭を下げると、ここは学校のクラブ活動じゃないぞ、教えてほしかったらカネ、授業料を持ってこいと、相手にしてもらえなかった。そこから、負けてたまるかとわたしの心に火がついた」
今の小学生はもちろんのこと、保護者であっても鈴木さんの現役時代を知る人は少ない。だが金田さんの逸話は会場の全員に大きなインパクトを与えたようだ。5つの会場を巡ると満面笑顔の保護者が鈴木さんを囲んで撮影を依頼する場に出会った。県下32チームに「草魂カップ」が浸透した姿でもあった。
プロ野球投手の勝利数でいえば、300勝を超えるのはわずかに6人。金田正一400、米田哲也350、小山正明320、そしてわが鈴木啓示が317で、以下別所毅彦310、スタルヒン303と続く。西脇市出身の鈴木さんは、日本プロ野球史に輝く名選手なのである。
日本全国には選手の名を冠した野球場が9つ存在する。長嶋茂雄記念岩田球場(千葉県佐倉市)、川上哲治記念球場(熊本県人吉市)、鶴岡一人記念球場(広島県呉市)、別府稲尾球場、山田久志サブマリンスタジアムなどなど。西脇運動公園野球場が「鈴木啓示 草魂スタジアム」と命名される日はやってくるのだろうか。実現すれば記念の「10番目」だ。
隣の加東市に「近本ロード」が誕生する前に、西脇市は動き出す。そう信じたいと思うのだが。
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