同級生の老化に衝撃受けて・・・
「自分の身体年齢は暦年齢より10年若いのだ」。そう信じて疑わない男は無事70歳を迎えた。これでみなさんの現役リタイア(60歳)と並ぶから、そろそろNPO理事長職を後進に譲りたいと考えた。一度職を得たらなかなか若い者に引き継がず「老害」と呼ばれる、そんな年寄りにはなりたくない、切にそう思ってきた。組織には常に若い血が必要だ。
と、そこへかつての教え子が現れた。中学教師時代、昼休みの将棋で苦杯をなめて土曜日になると菓子パンをおごらされた男。「無理くり押し付けられた」と彼は言うが、電子機器に強く、会計面の処理に優れ、ビジネス感覚に秀でた経営者を放っておく手はない。彼は次々に改善策を示し、補助金を獲得し、精神にハンディを持つ事業所の若者たち(就労継続支援B型ドリームボールの利用者)と鍋を囲みながらコミュニケーションをとっている。
だから、わたしの頭と体はもう来シーズンを向いている。春からは週2程度の勤務。これで還暦野球(60歳以上の部)と古希野球(70歳以上の部)の試合に参加することが可能になる。たまには練習にも顔が出せるというもの。野球が終わり、メンバーとランチを共にし、一日をたっぷり野球に使うのだ。わくわくする。12月6日(金)練習用ユニフォームに着替えて家を出る。木々の紅葉が美しく目に入り、寒さも感じない(本当は寒い朝だった)。
「熱いコーヒーを飲もうか」とコンビニへ。レジを過ぎ出口に向かうとき、カップ麺に湯を注ぐ勤労者の横でコピー機を操作している人物が目に入った。同級生だった。何十年ぶりかで目にする顔だ。苦労してきたと聞いている。見ると腰が少し曲がっているが、卑屈にも見えてペコペコお辞儀する姿は昔のままだった。中学校の運動場で走高跳をして遊んだ男。川につけかごをしてウナギをとると息巻いていたが、一度もそのウナギを同級生に見せなかった男。けっして嫌いではなかったかつての同級生の年老いた姿にさみしい気分を覚え、三田市の練習会場へ車を走らせた。
老化とは何か。喫煙、食事、運動、アルコールの摂取などによって差が出るとネットや書物で語られるが、細胞のミトコンドリアの働きが新陳代謝に影響を及ぼすとかなんとか、難しいことはわからない。わたしにわかることは、その人が生きがいを持って日々を過ごせたら、身体年齢が暦年齢を下回るのではないかということくらい。老化に関しては遺伝が3割、環境要因が7割というから。
午前9時、三田谷公園に到着。ラジオ体操、ストレッチ、ランニングからキャッチボールへと練習メニューが消化されていく。そこでは年齢を感じさせない男たちが嬉々としてボールを追っている。目の手術を終えた80過ぎのヴェテランリーダーがサングラスで快音を発して外野へ球を飛ばした。来シーズンに古希の仲間入りをするライトのYさんがスライディングキャッチで喝采を浴びている。グランドのあちらこちらで躍動する選手たち。
レギュラーバッティングのマウンドに上がり、還暦のM捕手相手に投球練習をしながら、コンビニで見た同級生S君を想った。H小学校、N中学校、ずっと一緒だった人物の老いた姿、それは実は自分の姿なのだが。笑える思いで、わたしは目いっぱいのストレートを投げ込んでいた。
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