初練習と健康

 1月21日(火)午後1時、薄曇りの三田谷公園野球場で練習が始まった。60歳を超えた者ばかり、照れもあってかあいさつはしごく簡単。監督だけが円陣の中で「明けましておめでとう」と語りかけた。またシーズンが始まる。選手の表情はどこかウキウキ。プロ野球の世界なら前夜の食卓には縁起の良い食べ物が並んだろう。

 わたし自身に限って言えば初練習の感触はVery good!還暦の10番目の野手としてセカンドのノックを受けた(わたしのメインは古希野球の投手)。この歳になると力みが消える。昨年度購入した柔らかい軟式用グラブにボールが飛び込んでくる感じ。初マウンドもコントロール、スピードともに及第点だった。昔慣れ親しんだ「ノーワインドアップ」(大きく振りかぶらない投げ方)に戻したことで腕の力が抜け、球筋が安定している。

 下半身もできている。この冬はビモロ・シューズ(使用感は後日報告)で50分、60分と歩いた。芝生の上で短距離走もこなした。ネットピッチングの結果も上出来だった。したがって初練習の感触はあらかた予想通りということか。今後はケガや風邪に要注意ではあるが。

 それはさておき、参加者22名。健康で皆がそろうことだけで還暦・古希野球の存在価値はある。手元に一冊の冊子がある。2014(平成26)年2月に発行された「還暦野球を通して生涯スポーツを考える」がそれである。これは兵庫教育大学大学院・教育内容・方法開発専攻行動開発系教育コース(難しい名前や)を平成25年に終了した(第32期)西脇市在住のT氏の著作だが、そこには還暦野球に参加する動機についてのアンケート結果が記述されている。

 健康増進、家庭円満、同志得られる、老後のボケ防止に最適、チームメイトとの交流、健康に日常生活を送るよろこび、努力を通じ健康であることが社会貢献・・・等々。回答からは、野球が生きる糧となり老後の人生に希望を与えていることが読み取れる。

 そんな思いを抱いて初練習に参集した三田プリンスの22名だった、が、二塁手Aさんの顔がない。聞けばなんと「今日が手術日」。首に近い背中部分の神経が圧迫して脚の痛みやしびれを誘発し、「複雑な部分なので心配」だが手術に踏み切ったとのこと。結果は耳にしていない。早期の回復を祈っているところだ。

 三田プリンスの還暦野球は兵庫県リーグでは優勝の常連であり、全国大会の優勝を視野に入れるほどの強豪だが、選手層は薄い。絶えず約10名の選手で公式戦をこなすから、Aさんの欠場(春先の)は痛い。そこへ俊足のKさんがやってくる。同じく独身のMさんとの料理談義が始まった(ともに奥さんを早く亡くされている)。「ワシ、今朝はヒジキをつくってきましてん」。すごいな、料理も俊足かいな。

 そんなKさんの明るさからは想像もできない話が本人の口から。「2月に結果がでますねん」。前立腺のPSA値が高く、先日MRIなどの精密検査を受けている、と。ありゃ。またそれも、ホンマかいな。これでふたりが休養となればたちまち先発オーダーで苦心することに。Kさんの好結果を願ってやまない。いい人だし。

 オーダーを組む苦労といえば、全国的な傾向として還暦野球への参加者が減っているらしい。60歳になっても年金は出ない。「そのうえに」俊足のKさん曰く、「公務員の再雇用でも以前は週3、週4などと本人の希望選択制度があったのに、今ではそらひどいもんでっせ、週3などと書こうものなら、そんな人は不用です、で終わりですわ」。日本社会、というか悪政のしわ寄せが還暦野球の未来に暗い影を落としているといえば大げさでっしゃろか。

 関西府県連盟の理事長会での話。昨年、ひとチームから一挙9名のメンバーが減っている。亡くなった人、引退した者、そして他チームへ移籍していった人など。へっーと驚いていたら、三田の古希最年長(86歳?)Mさんは奥さんの健康状態がよくなくて、しばらくは練習を欠席されるとのこと。あぁ「健康で野球を」と書くは易く、行うは難し。

 前述のアンケートにはこんな文章もある。

 ・健康で明るく、仲間意識を強調しながら相手チームとの交流を楽しんでいます。

 ・参加することに意義がある。

 ・人を押しのけても出場したい気持ちがなくなり、相手に譲り、認め合うことの大切さを感じます。

 スポーツの現場ではこれをフェアプレー、フェア精神と呼ぶ。今、政治の世界では与党のウソやごまかし、不正や堕落が留まるところを知らず、日本の国全体に恐ろしく悪い影響を与えている中で、還暦・古希野球が持つ「健康・明るさ・フェア精神」は、日本の未来を照らす一筋の光明なのではないか。

 いつの時代も子どもの目は澄んでいる。大人たちもきれいな目で社会を動かさなくてはならない。「還暦野球の魅力はどこにあると思われますか」に対するさいごの回答は。

 「童心にかえりプレーできること」

 健康、フェアプレー、童心、きれいな目。今年も野球を存分に楽しむぞと思う初練習だった。

シニアの昭和史 独り言 (還暦野球スポコラ改題)

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