古希野球、おれ達が頑張らねば
新型コロナが猛威を振るっている。世界中の113か国に拡がり、患者数は13万1000人を超え、死者は4900人を数えるという(3月13日現在・日経新聞調査)。怖いことだ。日本では682人の患者で、死者17人。われわれの住む兵庫県でも56人が新型コロナに感染しているのだ。今後の推移に注目しなければならない。
そんな中、兵庫県還暦軟式野球連盟は16日(月)に今シーズンの開幕を迎える(まずは古希から)。昨日13日(金)わたしは午後1時の練習に向けて三田谷運動公園へ車を走らせた。県道17号線。もとより信号の少ない田舎道だが心なしか行き交う車が少ないようだ。暖かいけれど雲が出てきた。いつもの気分でいつものように運動公園に入ろうとすると何か雰囲気が違う。別の会場に来たように感じる。
まずテニスコート。普段は中高年男女や主婦層が多いのに、この日は高校生の男子が何面もあるコートを走り回っている。学校が休みで部活動も中断されているから、ここで友達とスポーツをやっているということか。見慣れない光景に初めての野球場へ足を踏み入れる感覚があった。一塁側ベンチのを見てさらにビックリ。
ベンチ上の芝生など日ごろ誰もいない場所だから、あれっと思う。そこには家族連れの姿があった。2家族(多分ママ友)が昼食をとっていた。若いお母さんが二人、園児と小学低学年が6人、手作り弁当を広げている。さらに西側を見るとキャンプ用のいすと机を構えた親子3人連れ。もっと奥には別の複数家族が約10人。金曜日なのに。これが今問題の休業補償につながる姿か。学校、園は休み。親は仕方なく仕事を休んで子どもたちをみる。パートタイマーのお母さんは収入が減る。
そういえば、昨日から娘の主人も在宅勤務となり、4歳の長女は休園で自宅。2歳前の妹と二人が終日ソファの上で遊んでいる。娘は朝6時にスーパーへ行くも品物がなく、トイレットペーパーやマスクに事欠くありさまとなった。ちなみにこれは日本の話ではなく、ロサンゼルスの今朝の状況である。
練習開始。還暦チームの監督はベンチ上の芝生席を眺めて思ったという。「こんなときに年寄りの人たちが野球をするなんて非常識と思われないか」。選手一同のあいさつは、「えらい世の中になりましたね」だった。ウォームアップで外野の芝生を走っているときにふと、思った。「いや、こんなときにこそ元気に野球をやらなくっちゃ」と。そしてチーム内においても自分が先頭に立ってよいプレーをして明るさを表現しなくてはと責任を感じるのだった。
古希選手17名、還暦5名の参加で練習開始。わたしは16(月)の開幕戦に備えて打者2人に約20球投げてマウンドを降りる。高めの球が効果的だった。今シーズンからノー・ワインドアップに戻したからコントロールがよくなったのだ。昔に戻ったかな。バッティングは常に右方向を意識して球を待つ。もともとライト打ちが得意だったから外角打ちは苦にならない。そこへ中、内側へ投球が来れば腰の回転で引っ張る。いい感じで仕上がっている。
「もう10日帰国が遅れていたらマドリードでストップされていたかも」というのは娘さんのいるパラグアイを訪れていたMさん。「(三田市の患者さんが乗っていた)そのバスは神戸大学病院を通っていまっせ」と言われて、「ワシその路線バスで目の検診に行ったでぇ」と応えるリーダー。冷やかされる自営業の社長もいる。「Tさんは毎夜女性のいる店へ行ってる、やばいで」。だがTさんには心配無用の声も出る。なにせTさんの持つ菌は強力で他を寄せつけないらしい、とか。
練習後に大先輩からドーナツ店でコーヒーを飲もうと誘われる。一人だと直帰するところだがそうもいかない。ウッディタウン(中央)の標識を左折する。右手にイオンの看板があって、いつもなら満車の駐車場にパラパラ空きがみられる。ここにも影響が出てるわ。しかし目的のドーナツ店前は車でいっぱい。心配しながら店内へ入るとたくさんの客だった。老婦人3人、30歳くらいの男性1人、奥のテーブルにはペア1組、そこへ年寄り3人組。持ち帰り客も次々と店内へ。新型コロナどこ吹く風?
なるほど、またまた発見。こんなときこそ科学的根拠に基づいて対策を取り、安全を確保したうえでの経済活動は大切である、と。野球もやり、店へも入り、明るい気持ちで日常生活を送る。となると、関係者との事前打ち合わせなしで、学校、会社、イベントの自粛を呼びかけた日本の首相は間違っていることが理解できた。もっと多様な意見、対策を練るのが筋ではないかと思ったのだ。
たった半日の練習参加だったが、人々の日常生活を垣間見て学ぶことは多かった。そしてあらためて思った。「オレたちが頑張らねば、元気を見せなければ」、日本が滅びるぞ。そんな大それた意気込みでわたしはチームメイトとともに甲子園浜のオープニング・ゲームに臨むのだ。天気予報は16日寒く、冬に逆戻り、とか。甲子園浜は海の側。身も心も凍るようなピッチングだけはしたくないと思う、70歳の春である。
0コメント